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軍用アイウェアは「ミリタリーアイウェア」「ミルスペック・アイウェア」「タクティカル・アイウェア」等と様々な名で呼ばれていますが、ミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432」に準拠するアイウェアの正式総称はMCEP : Military Combat Eye Protection / 戦闘用アイウェアと呼びます。
↓ミルスペック/性能仕様書の題名
戦闘用アイウェアMCEPは、保護メガネやスポーツグラス等と外観が類似した形状で、どれも安全性を主眼に置いたマーケティングが行われています。このようなことから、多くの場合、一般市場では同じセクションで混在販売されています。 しかしながら、戦闘用アイウェアMCEPは保護メガネやスポーツグラス、ミリタリー風アイウェアと類似した形状をしていますが、全く異なる目的から生まれ、その性能仕様も大きく異なります。
戦闘用アイウェアMCEPという名称で実戦配備されたのは2003年頃からです。当時、米軍のOEF(Operation Enduring Freedom / 不朽の自由作戦)およびOIF(Operation Iraqi Freedom / イラクの自由作戦)において、負傷する兵士の大半が爆発物(迫撃砲・榴弾・爆弾・手榴弾・地雷・IED:簡易爆弾/即席爆発装置など)による攻撃でした。*1
↓2001年-2005年、OIF/OEF負傷原因(調査対象3,102名) *1
2001年から2005年の統計では、調査対象3,102名の内、全体の78%が爆発物による負傷であり、1回の攻撃で複数名に対して、人体の複数個所を負傷させ、眼の怪我も急増させました。この対策として、米軍は戦闘用アイウェアMCEPの配備を開始しました。
このような経緯から生まれた戦闘用アイウェアMCEPは、金属フレームのように加撃衝突でフレームが歪み、レンズが割れたり、外れたりしないように加撃に強く、柔軟な超弾性樹脂フレームが採用され、衝撃に強いポリカーボネートを主素材として、衝撃性能が低下するレンズコーティングが使用されていません。
この実戦に対応するアイウェアの性能仕様を文章化したのがミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432」です。もちろん、戦闘用アイウェアMCEPと言えども、9mm拳銃の実弾を防いだり、凄まじい爆発から3メートル足らずの距離で兵士を保護することはできませんし、そのようには設計されていません。
155mm砲弾で作られたIEDの破片は、初速が1,200~1,800m/秒であり、その破片サイズは様々ですが、ミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432」のバリスティック基準で用いられる鋼弾T37(5.7grain) / 15口径の弾丸とほぼ似た破片であると仮定した場合、IEDの破片の初速は米軍仕様要求の6 ~ 9倍のエネルギーを持つことから戦闘用アイウェアMCEPでは防ぐことができません。
それでも過去の統計データや調査によって裏付けられているのは「明らかに」兵士を保護し、眼の怪我を減少させる効果があるということです。*3
↑ OIF(イラク)での調査/数値データ: *2
戦闘用アイウェアMCEPを知るには、それが準拠するミルスペックを知らなければなりません。そして、そのミルスペックが何故、そのような性能仕様となったのかは、その時代背景:史実を知る必要があります。
REFERENCES / 参考文献:
*1 The Journal of TRAUMA Injury, Infection, and Critical Care, Combat Wounds in Operation Iraqi Freedom and Operation Enduring Freedom
*2 Gondusky JS, Reiter MP. Protecting military convoys in Iraq: An examination of battle injuries sustained by a mechanized battalion during Operation Iraqi Freedom II. Mil Med. 2005;170:546-549.
*3 LTC James R. Auvil, Evolution of military combat eye protection. US Army Med Dep J 2016; 3(12): 135–139.
1922年
Z2 Head and Eye Protection
【区分】規格
現在のANSI Z87.1規格やミルスペックMIL-PRF-32432の原点といえる基準です。
現在のANSI Z87.1規格やミルスペックMIL-PRF-32432の原点といえる基準です。
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- 頭部と眼の保護に関して、米陸軍と米海軍、そして米国立標準化機構の共同作業で、軍内部向けに作られた文書です。1959年には、軍のみならず、米国の規格安全基準として承認されました。*1
REFERENCES / 参考文献:
*1 ANSI Z87.1-2010 ANSI/ISEA American National Standard for Occupational and Educational Personal Eye and Face Protection Devices
1968年
Z87.1-1968 Eye and Face Protection
【区分】規格
Z2はANSI Z87.1規格に引き継がれました。
Z2はANSI Z87.1規格に引き継がれました。
- さらに詳しく
- Z2規格は、その役目をANSI Z87.1規格に引き継ぎました。ANSIとは、American National Standards Institute = アメリカ国家規格協会を意味し、ANSI Z87.1規格が「アメリカ国家規格」と称される理由となっています。この規格は、以後、随時更新されていきます。*1
REFERENCES / 参考文献:
*1 ANSI Z87.1-2010 ANSI/ISEA American National Standard for Occupational and Educational Personal Eye and Face Protection Devices
1996年
MIL-PRF-31013
【区分】ミルスペック
軍の性能仕様MIL-PRF-31013「SPECTACLES, SPECIAL PROTECTIVE EYEWEAR CYLINDRICAL SYSTEM(SPECS)」
軍の性能仕様MIL-PRF-31013「SPECTACLES, SPECIAL PROTECTIVE EYEWEAR CYLINDRICAL SYSTEM(SPECS)」
- さらに詳しく
- 1960年代に米陸軍がヒューマンパフォーマンスと素材、そして軍事学の一分野であるバリスティック(弾道学)に関する研究を始め、1984年に兵士の眼を保護する「特殊保護アイウェア:SPECS」の開発に役立てられました。1995年にSPECSは米陸軍の標準装備品となりました。*1
[↑ SPECS]
本来、このMIL-PRF-31013は米陸軍が開発した「特殊保護アイウェア:SPECS」のためのMIL-PRF(性能仕様)でしたが、後の2003年頃から兵士達に支給される「戦闘用アイウェアMCEP」にも暫定的に適用されました。
Ballistic fragmentation protection/バリスティック(耐衝撃)基準では、ミルスペック/詳細仕様MIL-STD-662「V50Ballistic Test for Armor」に紐づけされていましたが、現在のMIL-PRF-32432系とは基準値に違いはあるものの、検査方法に大きな違いはありません。
0.15 caliber, 5.8 grain, T37 shaped projectile at a velocity of 640 to 660 feet per second.
REFERENCES / 参考文献:
*1 LTC James R. Auvil, Evolution of military combat eye protection. US Army Med Dep J 2016; 3(12): 135–139.
2001年 OEF
【区分】歴史的背景
米軍 Operation Enduring Freedom / 不朽の自由作戦を開始
※戦闘用アイウェアMCEPの進化および、これに関連するミルスペック/性能仕様のアップデートは当時の状況が影響するため記載。
米軍 Operation Enduring Freedom / 不朽の自由作戦を開始
※戦闘用アイウェアMCEPの進化および、これに関連するミルスペック/性能仕様のアップデートは当時の状況が影響するため記載。
2003年 OIF
【区分】歴史的背景
米軍 Operation Iraqi Freedom / イラクの自由作戦を開始
※戦闘用アイウェアMCEPの進化および、これに関連するミルスペック/性能仕様のアップデートは当時の状況が影響するため記載。
米軍 Operation Iraqi Freedom / イラクの自由作戦を開始
※戦闘用アイウェアMCEPの進化および、これに関連するミルスペック/性能仕様のアップデートは当時の状況が影響するため記載。
OIF/OEF爆発物の攻撃増加
【区分】歴史的背景
- さらに詳しく
- 2001年から2005年、OIF/OEFに参加した米軍兵士の負傷原因は爆発物によるもので全体の78%を占めていました。*1
頭頚部を負傷する割合は、過去の第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争との割合と比べて16~21%よりも高くなっていました。
爆発物とは地雷、迫撃砲、榴弾、爆弾、手榴弾、IED:Improvised Explosive Device(即席爆発装置)等を含め、爆発などで周囲に被害をもたらす物の総称です。IEDとは次の図のような砲弾や火薬等に起爆装置を取り付けた物ですが、携帯電話による遠隔タイプ、ドアを開くと爆発するトラップ・タイプ、車両と組み合わせた自動車タイプ等があります。
眼にとって脅威なのは爆発物による爆風・爆片・熱・火球などで、これらが複合的に襲い掛かり、人体の複数個所を同時かつ複雑に負傷させてしまいます。閉鎖された空間、例えば屋内や車内といった場所では、より威力が増し、脅威は増大します。
REFERENCES / 参考文献:
*1 The Journal of TRAUMA Injury, Infection, and Critical Care, Combat Wounds in Operation Iraqi Freedom and Operation Enduring Freedom
①兵士のサングラス着用問題
【区分】APEL®関連
保護メガネと勘違いして、事実上、眼の保護能力を持たないサングラスやスキーゴーグルを作戦中の兵士達が着用する問題が、負傷という最悪の結果で露呈しました。
保護メガネと勘違いして、事実上、眼の保護能力を持たないサングラスやスキーゴーグルを作戦中の兵士達が着用する問題が、負傷という最悪の結果で露呈しました。
- さらに詳しく
- 当初、OIF/OEFでは多くの兵士が眼を保護していない、もしくは、事実上の眼の保護能力を持たないサングラスを着用していました。
[↑写真左では4名中1名、写真右では3名中1名しか眼を保護していない。]
[↑眼の保護能力を持たないサングラスを着用する兵士達]
爆発物による負傷が全体の78%であるにも関わらず、多くの兵士が眼を保護していません。この原因の一つとして、当時の米軍では兵士の眼保護具に関する明確な装用コンプライアンスが不完全であったことが起因していたと言われています。*1
爆発物が多用される現場であるにも関わらず、普通の眼鏡や金属フレームのサングラスを着用する兵士達において、取り返しのつかない負傷を負うことがありました。
しかし、このような怪我は兵士だけの責任ではなく、市販のスポーツグラスやミリタリー風サングラスの販売方法にも問題がありました。メーカーや販売店は言葉巧みに「安全」や「ミルスペック準拠」だと主張しますが、その安全性には何ら裏付けはなく、事実上の眼の保護能力を持たないにも関わらず「(レンズだけは)ミルスペック準拠(自社評価)」など、実際には軍の基準とはかけ離れたものでした。
この問題は後の戦闘用アイウェアMCEPに適用されるミルスペックやAPEL®に大きく影響を及ぼしていきます。
REFERENCES / 参考文献:
*1 LTC James R. Auvil, Evolution of military combat eye protection. US Army Med Dep J 2016; 3(12): 135–139.
米陸軍第10山岳師団 緊急要請
【区分】歴史的背景
米陸軍第10山岳師団が眼保護具の強化に関する緊急要請を提出*1
REFERENCES / 参考文献:
*1 LTC James R. Auvil, Evolution of military combat eye protection. US Army Med Dep J 2016; 3(12): 135–139.
米陸軍第10山岳師団が眼保護具の強化に関する緊急要請を提出*1
REFERENCES / 参考文献:
*1 LTC James R. Auvil, Evolution of military combat eye protection. US Army Med Dep J 2016; 3(12): 135–139.
ANSI Z87.1-2003
【区分】規格
Z87.1規格を更新。ANSI Z87.1-2003 American National Standard for Occupational and Educational Personal Eye and Face Protection Devices
Z87.1規格を更新。ANSI Z87.1-2003 American National Standard for Occupational and Educational Personal Eye and Face Protection Devices
2004年
戦闘用アイウェアMCEPの支給開始
【区分】歴史的背景
米軍は正式採用でなくても、軍の検査に合格し「軍の基準」を満たした戦闘用アイウェアMCEPMの着用を許可し、支給を開始しました。
米軍は正式採用でなくても、軍の検査に合格し「軍の基準」を満たした戦闘用アイウェアMCEPMの着用を許可し、支給を開始しました。
- さらに詳しく
- 兵士達には米軍が開発し、軍の基準を満たす眼保護具(M-1944ゴーグル/SPECSなど)を支給していました。しかし、ほとんどの兵士達は「顔に合わない」「着用し辛い」「射撃の際に邪魔になる」等、様々な理由で着用することはなく、軍の基準を満たさず、事実上、眼の保護能力がない市販のサングラスやゴーグルを着用していました。
2004年、米軍は、これまでの方針を変え、従来のような開発から採用までに複雑で長い歳月を必要とせず、軍の基準を満たす眼保護具であれば、市販のアイウェアを兵士達へ支給することを決めました。
これによって、軍は市販のアイウェアを軍の基準に照らし合わせた検査を行い、これに合格したアイウェアを「戦闘用アイウェアMCEP」として、兵士達に着用の許可を与えましたしました。*1
現在のAPEL®(Authorized Protective Eyewear List)の始まりです。
出典画像 *2
2004年1月、最初のAPEL®として承認されていたのは3種類でした。*2
その中の一つ、WILEY X®社SG-1は、既に多くの兵士達の眼を守っていた実績とデザイン性から、多くの兵士達が自ら進んで着用しました。
この自ら進んで着用するという「高い着用率」=眼を保護する確率の上昇が、後に兵士の眼の怪我を激減させていくこととなります。
REFERENCES / 参考文献:
*1 LTC James R. Auvil, Evolution of military combat eye protection. US Army Med Dep J 2016; 3(12): 135–139.
Source / 出典: *2 PS Magazine,Issue 614,48-49. Available at: https://www.ldac.army.mil/web2/archive/PS2004/PS_614.pdf. Accessed Feb 28, 2023.
②兵士のサングラス着用問題
【区分】APEL®関連
米軍は兵士達に向けて戦闘用アイウェアMCEPのみを着用するように安全啓蒙活動を開始。
米軍は兵士達に向けて戦闘用アイウェアMCEPのみを着用するように安全啓蒙活動を開始。
- さらに詳しく
- 戦闘用アイウェアMCEPの支給は始まったばかりで、OIF/OEFで展開する全ての兵士に行き渡るまでには、もう少し時間がかかりました。(2004年末には、派遣中の全ての陸軍兵士には支給されることとなります。)
[↑陸軍兵士に支給されている戦闘用アイウェアMCEPを私費購入して着用していたアメリカ海兵隊員。IED攻撃を受け、顔を怪我したが眼は守ることができた。彼の隣にいるアメリカ海兵隊員は戦闘用アイウェアMCEPを着用していない。]
「軍の支給が間に合わない」「軍から支給されていない」など、様々な理由から私費購入する兵士達がいましたが、戦闘用アイウェアMCEPはサングラスやスポーツグラスと類似した形状で、販売店では同じセクションで混在販売していたため、戦闘用アイウェアMCEPよりも安価であったり、好みのデザインであるなどの理由からミリタリー風アイウェアを購入してしまうなど、事実上、眼を保護できていない兵士がいました。
その結果、軍の基準を満たさず、事実上の眼の保護能力を持たないサングラスによって、爆発物による爆風や破片でレンズが割れたり、フレームからレンズが外れる等、裸眼よりも深刻な眼の怪我を負うことがありました。
米軍では、これら不確かな物と戦闘用アイウェアMCEPを区別すると共に「着用コンプライアンス」を明確化する安全啓蒙活動を開始しました。なお、現在に至っても、この兵士のサングラス着用問題は根強く残っており、継続的に軍による安全啓蒙活動は行われています。
出典画像 *2
REFERENCES / 参考文献:
*1 LTC James R. Auvil, Evolution of military combat eye protection. US Army Med Dep J 2016; 3(12): 135–139. Source / 出典: *2 PS Magazine,Issue 627,27-34. Available at: https://www.ldac.army.mil/web2/archive/PS2005/PS_627.pdf. Accessed Feb 28, 2023.
2005年
戦闘用アイウェアMCEPの有効性
【区分】歴史的背景
戦闘用アイウェアMCEPの支給と安全啓蒙によって、OIF/OEFにおける兵士の眼の怪我が減少。
戦闘用アイウェアMCEPの支給と安全啓蒙によって、OIF/OEFにおける兵士の眼の怪我が減少。
- さらに詳しく
- 戦闘用アイウェアMCEPは2004年から支給され始め、同時に兵士達への安全啓蒙も行われました。その結果、兵士の眼の怪我は劇的に減少しました。厳密に言えば、2005年中頃から攻撃頻度が増加したことから一時的に眼の怪我は増加傾向でしたが、以後はさらに攻撃頻度が増加したにも関わらず、明らかに減少していきました。*1
戦闘用アイウェアMCEPの有効性においては、攻撃を受け、負傷した兵士を救護するという混乱した状況の中で、適切に着用していたかどうかの正確で信用に値するデータの取得が困難であることから、眼を負傷した兵士の入院率と攻撃頻度/傾向から照らし合わせるものが中心となっています。
また、アメリカ海兵隊1st Light Armored Reconnaissance (LAR) Battalionの海兵隊員の負傷に関して、驚くべき調査報告がありました。同隊は6ヶ月間に32回の攻撃で188名が負傷し、負傷箇所の75%が頭部と上半身を占めました。負傷者の多くには着用していた戦闘用アイウェアMCEPは、榴散弾や爆発物の破片などで損傷していましたが、眼の負傷はわずか1名(0.5%)でした。特記すべき点として、同隊における戦闘用アイウェアMCEPの装用は、ほぼ100%ということです。眼を負傷した1名は、戦闘用アイウェアMCEPを適切に着用していなかったため、爆風によってアイウェアが吹き飛ばされたことが原因と結論付けられています。*2
REFERENCES / 参考文献:
*1 US Department of Defense. Measuring Stability and Security in Iraq, Report to Congress, June 2010. Washington, DC: US Dept of Defense
*2 Gondusky JS, Reiter MP. Protecting military convoys in Iraq: An examination of battle injuries sustained by a mechanized battalion during Operation Iraqi Freedom II. Mil Med. 2005;170:546-549.
2006年
MIL-DTL-43511D
【区分】ミルスペック
米軍の詳細仕様MIL-DTL-43511D「VISORS, FLYER’S HELMET, POLYCARBONATE」は、主にヘルメットバイザーやゴーグルに用いられた仕様要求です。
米軍の詳細仕様MIL-DTL-43511D「VISORS, FLYER’S HELMET, POLYCARBONATE」は、主にヘルメットバイザーやゴーグルに用いられた仕様要求です。
2010年
GL-PD 10-20
【区分】ミルスペック
GL-PD 10-20 MILITARY COMBAT EYE PROTECTION(MCEP)SYSTEM
GL-PD 10-20 MILITARY COMBAT EYE PROTECTION(MCEP)SYSTEM
- さらに詳しく
- 表記はGL-PD(PURCHASE DESCRIPTION)という米軍の物品購入案内/手引きですが、内容はMIL-PRF:性能仕様書となっています。GL-PD 10-20の表題はMILITARY COMBAT EYE PROTECTION(MCEP)SYSTEMとなっており、事実上、史上初の戦闘用アイウェアMCEPの性能仕様/ミルスペックといえます。
当初より、このGL-PD 10-20は後のMIL-PRF-32432(GL)までの「暫定的なつなぎ」として知られていました。これは既に戦闘用アイウェアMCEPを製造するメーカーや新規参入したいメーカーに対して、その性能仕様要求を明確化することで、資本主義の競争原理を働かせ、より良い戦闘用アイウェアMCEPの開発とコストダウンに役立ちました。
Ballistic fragmentation protection/バリスティック(耐衝撃)基準では、ミルスペック/詳細仕様MIL-STD-662「V50Ballistic Test for Armor」に紐づけされていましたが、現在のMIL-PRF-32432系とは基準値に違いはあるものの、検査方法に大きな違いはありません。
クラス1(グラス形状)では0.15 caliber, 5.8 grain, T37 shaped projectile at a velocity of 640 to 660 feet per second.
2010年
ANSI/ISEA Z87.1-2010
【区分】規格
Z87.1規格を更新。米国の個人保護装備や安全器具等の業界団体ISEA(International Safety Equipment Association)が加わったことで、正式名称はANSI Z87.1から「ANSI/ISEA Z87.1」に改名されました。一般的にはこれまでとおりに通称「ANSI Z87.1」で呼ばれています。ANSI / ISEA Z87.1-2010 American National Standard for Occupational and Educational Personal Eye and Face Protection Devices
Z87.1規格を更新。米国の個人保護装備や安全器具等の業界団体ISEA(International Safety Equipment Association)が加わったことで、正式名称はANSI Z87.1から「ANSI/ISEA Z87.1」に改名されました。一般的にはこれまでとおりに通称「ANSI Z87.1」で呼ばれています。ANSI / ISEA Z87.1-2010 American National Standard for Occupational and Educational Personal Eye and Face Protection Devices
2013年
MIL-PRF-32432(GL)
【区分】ミルスペック
米軍の性能仕様MIL-PRF-32432(GL)「MILITARY COMBAT EYE PROTECTION (MCEP) SYSTEM」
米軍の性能仕様MIL-PRF-32432(GL)「MILITARY COMBAT EYE PROTECTION (MCEP) SYSTEM」
- さらに詳しく
- GL-PD 10-20の後継となるミルスペック/性能仕様書です。このMIL-PRF-32432(GL)は、アイウェア単体の性能仕様の言及に留まらず、これまで米軍を悩ましていたミリタリー風アイウェア等の事実上、眼の保護能力を待たないアイウェアと戦闘用アイウェアMCEPの差別化を図るための様々な仕様が盛り込まれました。
ミルスペックとしては、初めてAPEL®(Authorized Protective Eyewear List)に言及しており、APEL®に”登録された(場合は)”アイウェアにAPEL®マーキングをする規定が盛り込まれています。
Ballistic fragmentation protection/バリスティック(耐衝撃)基準では、GL-PD 10-20から変更ありませんでした。 クラス1(グラス形状)では0.15 caliber, 5.8 grain, T37 shaped projectile at a velocity of 640 to 660 feet per second.
2015年
ANSI/ISEA Z87.1-2015
【区分】規格
Z87.1規格を更新。ANSI / ISEA Z87.1-2015 American National Standard for Occupational and Educational Personal Eye and Face Protection Devices
Z87.1規格を更新。ANSI / ISEA Z87.1-2015 American National Standard for Occupational and Educational Personal Eye and Face Protection Devices
2020年
ANSI/ISEA Z87.1-2020
【区分】規格
Z87.1規格を更新。ANSI / ISEA Z87.1-2020 American National Standard for Occupational and Educational Personal Eye and Face Protection Devices
Z87.1規格を更新。ANSI / ISEA Z87.1-2020 American National Standard for Occupational and Educational Personal Eye and Face Protection Devices
2018年
MIL-PRF-32432A
【区分】ミルスペック
MIL-PRF-32432A MILITARY COMBAT EYE PROTECTION (MCEP) SYSTEM
MIL-PRF-32432A MILITARY COMBAT EYE PROTECTION (MCEP) SYSTEM
- さらに詳しく
- ミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432A」は、最新の電子式調光レンズなどの性能仕様を取り入れています。Ballistic fragmentation protection/バリスティック(耐衝撃)基準は従来の「鋼弾T37の射出速度600-640 ft/s」から「射出速度700-725 ft/s」に強化されました。
誤解を生じさせないために補足説明をすれば、同基準のバリスティック基準であれば既存の戦闘用アイウェアMCEPであっても、「レンズのヒビ割れ」は、ほぼ考えられません。しかし、爆発物によって「飛散した金属片」による衝撃でレンズの変形(オイルキャニング現象)などで「レンズがフレームから外れる」「金属片がレンズを貫通する」といった事象を想定して射出速度が上げられました。
このミルスペック/性能仕様において、最も厳格化されたのは「MIL-PRF-32432A」に準拠したアイウェアとは、米軍監査に合格した会社(APEL®メーカー)が製造し、軍の性能仕様を満たす戦闘用アイウェアMCEPを米軍で検査/トライアルテストを経てAPEL®に登録された物としたことです。
仮にミリタリー風アイウェアがミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432A」に準拠しているように見せかけたマーケティングや販売が行われても、APEL®に登録されていなければ安全性が低いものであると判断できるようになりました。
これによって、兵士が私費購入で好みのスポーツグラスやミリタリー風アイウェアを着用していたとしても、それが実際の戦闘では使用してはならないと理解させやすくなりました。
それでも類似した形状であることから、間違って使用してしまう兵士は存在します。そのような兵士のために、軍はAPEL®を商標登録し、APEL®メーカーや販売会社に対してAPEL®マーキングのある製品は米軍内部でのみ販売を許可しました。 これにより、長年、米軍を悩ませていた保護メガネやスポーツグラス、ミリタリー風アイウェアと「戦闘用アイウェアMCEP」を明確に差別化することが容易となりました。
しかしながら、未だにミルスペック/性能仕様を偽るようなミリタリー風アイウェアも存在することから、戦闘用アイウェアMCEPとAPEL®を兵士達が理解するように啓蒙活動を継続して行っています。
なお、米軍内部ではなく、一般市場でAPEL®マーキングがあるアイウェアを手に入れたとしても、それは戦闘用アイウェアMCEPとしての性能を維持できる保管期間5年を過ぎた物で、本来は破棄すべきものが不正な方法で流通した可能性が高い。保護メガネというよりは、コレクション程度に考えるべきものであることを忘れないでください。
下記の表はミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432A」における要件を簡易的にまとめたものです。
ミルスペックではバリスティック基準ばかりが話題になりますが、それは要件項目の1項目に過ぎず、その他の安全に関する要件項目や性能仕様が多く存在しています。
SYSTEM CONFIGURATION アイウェア本体と付属品の構成 System Configuration アイウェア形状によるクラス分類 Carrying Case アイウェア収納ケースの要件 Instruction Booklet アイウェア取扱説明書の要件 Color アイウェアのカラー要件 Systems Retention 各クラスの装用に関する要件 Component Changes 装用者自身がレンズ等の交換可能な要件 Uniformity system dimensions アイウェアの寸法/品質に関する要件 System weight MCEPsの重量に関する要件 SYSTEM INTERFACE REQTS 他の個人装備品との併用に関する要件 ACH AND ECH Helmet ACHタイプ・ヘルメットとの併用要件 CVC Helmet CVCタイプ・ヘルメットとの併用要件 Hearing Protection Loss イヤーカップのノイズ減衰に関する要件 LWH Helmet LWHタイプ・ヘルメットとの併用要件 IHPS IHPS(統合頭部保護システム)との併用要件 Weapons 指定の銃火器との併用要件 Optics/Displays 規定の光学機器等との併用要件 Environ. Prot. Clothing ECWCS(拡張寒冷地用被服システム)との併用要件 Prescription lens MCEP Style Uに関する要件 Mildew resistance 防カビ性に関する要件 Chemical Resistance 耐油、耐薬に関する要件 Ballistic Fragmentation Characteristics 耐衝撃に関する要件 OPTICAL CHARACTERISTICS 光学性能に関する要件 Luminous transmittance 可視光透過率に関する要件 Neutrality 分光透過率に関する要件 Chromaticity レンズ色度に関する要件 Transition Function (Style T only) 電子式調光レンズの自動/手動に関する要件 Transition Time (Style T only) 電子式調光レンズの色濃度変化に関する要件 Field of view (with and without UPLC) 任務上、適切な視界を提供する要件 Optical distortion レンズの歪みやボケがない光学要件 Ultraviolet absorption レンズの紫外線カットに関する要件 Abrasion 傷防止に関する要件 Fogging 防曇に関する要件 Style C fogging MCEP Style Cの防曇に関する要件 Carrying case protection 収納ケースのアイウェア保護性能の要件 Service Life/Shelf life 6ヶ月間の現場使用と60ヶ月の保管可能な耐久性に関する要件 Repair 工具を未使用で損傷したレンズ、フレーム交換に関する要件 ENVIRONMENT TESTS 全天候-60℉~120℉で装用できる要件 Eyewear 全天候下で性能劣化がしない要件 -Temperature 気温による性能劣化に関する要件 -Solar Radiation 疑似太陽放射による品質に関する要件 -Humidity 温度と湿度に関連する性能要件 -Adhesion レンズ傷防止コートに関する要件 -Wind/dust クラス2とクラス3の防塵防風性に関する要件 -Salt water 塩水による性能維持に関する要件 Style C Power Requirements 電力供給タイプのStyle Cの稼働時間/寿命に関する要件 Style T Power Requirements 電力供給タイプのStype Tの稼働時間/寿命に関する要件 Dimensions 男性/女性に関連する装用要件 Pantoscopic tilts and face form angles MCEP Style Uの傾斜に関する要件 Comfort 顔面を怪我しない構造と装着感・快適性に関する要件 Donning/doffing アイウェア着脱と収納ケースから取り出しに関連する要件 Use MCEPのタクス要件 User survivability 装用者の生存に悪影響を与えない要件 Prolonged effects 長時間使用における快適性に関する要件 Skin irritants 顔を傷つける突起部/衛生的に保てる要件 Risk Assessment 規定のリスク基準を超えない要件 Toxicity 健康上の被害をもたらす化学物質は使用しない要件 Identification and Marking APELマークの表示に関連する要件 Compliance with ANSI Z87.1 ANSI Z87.1規格の準拠要件 Refractive Power/Astigmastism ANSI Z87.1規格の光学基準の一部例外に関する要件 FLAMMABILITY MCEPシステムの難燃性の仕様要件 ANSI Flammability 燃焼試験による難燃性の仕様要件 ANSI Ignition 発火に関する耐性仕様要件 Textile Flammability クラス2とクラス3に使用する繊維の難燃性の仕様要件 WORKMANSHIP MCEPsの品質/仕上がり要件
2022年
最新APEL®
これまでも随時更新されてきたAPEL®は2022年6月に新たな戦闘用アイウェアMCEPを加えて更新されました。
出典画像 *1
APEL®は特定のメーカーが独占的にならぬように新規参入が可能です。今後も適切に性能仕様/ミルスペックMIL-PRF-32432Aに準拠した製品を製造すれば、新たなアイウェア・メーカーがAPEL®メーカーとなれます。しかし、今もなお、ミルスペック準拠を騙るミリタリー風アイウェアが米軍内で流通し、それを強制的に排除することはできないため、APEL®制度は廃止されず、随時更新されていくでしょう。
Source / 出典: *1 Program Executive Office Soldier, URL https://www.peosoldier.army.mil/Portals/53/files/APEL_Poster_29062022.pdf
APEL®は特定のメーカーが独占的にならぬように新規参入が可能です。今後も適切に性能仕様/ミルスペックMIL-PRF-32432Aに準拠した製品を製造すれば、新たなアイウェア・メーカーがAPEL®メーカーとなれます。しかし、今もなお、ミルスペック準拠を騙るミリタリー風アイウェアが米軍内で流通し、それを強制的に排除することはできないため、APEL®制度は廃止されず、随時更新されていくでしょう。
Source / 出典: *1 Program Executive Office Soldier, URL https://www.peosoldier.army.mil/Portals/53/files/APEL_Poster_29062022.pdf
- WILEY X®関連のAPEL®とミルスペックについて
- APEL®メーカーによって異なりますが、WILEY X®が製造する米軍向けAPEL®承認モデルと日本向け製品モデルの安全性能に差はなく、基本的にマーキングの有無のみの違いです。※メーカーによって同商品名で類似形状でも性能差異がある場合がございます。各メーカーにご確認ください。
また、APEL®(Authorized Protective Eyewear List)は、戦闘用アイウェアMCEPと類似形状の保護メガネやスポーツグラス、ミリタリー風アイウェアと明確に区別し、兵士が誤って類似形状アイウェアを着用させないという役割があります。ミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432A」もAPEL®と紐づけされた性能仕様で同様です。
長年、米軍では保護メガネやスポーツグラス、ミリタリー風アイウェア等と戦闘用アイウェアMCEPを混在して認識しないように兵士達へ安全啓蒙と着用コンプライアンスの明確化、それと合わせた教育を行ってきました。これは現在も継続されています。
このようなことから、WILEY X®ではAPEL®に関連するミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432A」の表示について下記のように考えています。 なお、WILEY X®など、米軍監査に合格しているAPEL®メーカーでAPEL®に承認されるモデルは最大で5モデル程度です。厳密にいえば、ミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432A」準拠品とは、APEL®承認が前提条件となるため、1メーカー最大5モデル(寒冷地仕様ゴーグルStyle Cを含む)だけがミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432A」準拠品と言うことができます。
例えば、WILEY X®の場合、SG-1というモデルは、過去にAPEL®承認モデルでしたが、同性能でも新たに別モデルをAPEL®評価試験に提出し、それが承認された場合には「新しいモデルと差し替え」られます。1つのメーカーの類似モデルが何種類も承認されることはありません。※とても類似した形状のモデルでも、実際にはサイズの違い(男性等の大きい顔、女性などの小顔)や機能的な差異があります。
この基本を前提に、例えばWILEY X®で3モデルの戦闘用アイウェアMCEPを開発した場合、デザイン上の違いはあるものの、基本的な性能仕様は同じです。この3モデルの内、いづれかを米軍の評価試験に提出し、問題がなければ現場兵士達によるモニター評価が始まります。最終的に選ばれたモデルがAPEL®承認モデルとして、ミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432A」準拠品と言え、同性能でもAPEL®に承認されなかったモデルは、ミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432」準拠品となります。しかしながら、この時にAPEL®に承認されなかったモデルであっても、次回APEL®更新時期に再び提出することでAPEL®承認モデルとなることもあります。WILEY X®における過去の事例では「WX GRAVITY」や「NERVE」等があります。このようなことから、ミルスペック/性能仕様を頻繁に変更することを避け、製品ご案内上の表示はミルスペック/性能仕様「MIL-PRF-32432」で統一しています。
なお、戦闘用アイウェアMCEPは、それ単体では効果的に使用することができません。「戦闘用アイウェアMCEP着用コンプライアンス」が明確であり、それを日々の訓練や教育で徹底する必要があります。もし、日常的な業務や訓練において、車両輸送の運転者や搭乗員が戦闘用アイウェアMCEPを着用していないようであれば、それは問題です。爆発物の威力は、閉鎖された空間で高まり、対車両においては車内の搭乗者に対して絶大な威力となって襲いかかります。また、日本人が着用する場合、モンゴロイド骨格であることを理解し、レンズやフレームの形状や素材を理解し、一人ひとりの顔や任務に合わせた複数種類のモデルから選ぶのが良いでしょう。
APEL®はアメリカ合衆国 国防総省/陸軍省の登録商標です。APEL® is a registered trademark of “Department of the Army FEDERAL AGENCY UNITED STATES”.